最近、駅のホームで電車を待っていると
「東京は人が多いな」と言う声が聞こえてくる。
夏休みで東京に遊びに来ている人なのかと
耳をダンボにして聞き入ってしまう。
確かに、1時間に数本の電車しか来ないような地方と
都内の数分待てば電車が来る駅とを比べれば、
電車の数だけでなく人の数もはるかに多い。
どこからこれだけの人が出てくるのだろうと
不思議に思うこともある。
地方から来る人は、その人混みだけで疲れるだろうな。
ましては、朝の通勤時間帯の電車は、自分の国とは思えないだろうな。
満員電車の辛い印象が残って、多分東京が嫌いになるような気がする。
今から15年前、実は僕も就職活動をしながら
「東京は住むところではない」と思った。
渋谷駅前のスクランブル交差点を人に触れずに渡るのは
至難の業。「ひとひとひと」が嫌だった。
こんなことから、「東京は遊びに来るだけでいい」と思ったのをよく覚えている。
でも、いま東京に住んでいるのは、「東京行ったら?」の母の一言。
それで東京に住み着いてしまった。
「住めば都」とはよく言ったもので、
人混みに嫌気を感じていたのにもいつのまにか慣れて、
いまは、この便利さに恩恵を受けている。
東京は、例えるなら寝っ転がりながらでも
あらゆるものが掴めるくらい、便利な環境。
23区ならば、15分も歩けばコンビニはある。
いつだってお金もおろせる。駅前にはファストフードと交番はある。
時刻表を見ずに電車に乗れる。
家から30分圏内にデパートだってある。ふつうに芸能人だって歩いてる。
まあ、人があこがれる街なのは良くわかる。
しかし、東京で生まれて東京にずっと住む人に聞くと
「おれには、田舎が無い」とさみしそうに言う。
東京が生まれ故郷でも、はそこは「田舎」ではない。
有楽町の駅前で信号が変わるのを待ちながら
そのことを思い出し、すこし寂しくなった。

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